帽子のほころびるとき
田中修子

膨らんできた
はくもくれんの
銀にひかる繭のような葉

わたしのはらのなかで
懐かしい男と猫とあのうちは
ことばをうけて赤ん坊になり
ホトホト
うみ落とされてゆく

ていねいにガムテープで
ひびわれをなおされた
菊のすりガラス
その向こうの朝は
おぼろに白くて目を打たない
瞼は
眠たく撫でられた

わたしの渇きは
男と猫とうち
すべて丸のみをしておさまった

うわばみのわたしは
帽子のふりをして
風にのってフワリと泣く

ひっかかった桜の枝のつぼみは
やがての春を妊娠していた
オギャアと咲けば
すべてがほころびるとき


自由詩 帽子のほころびるとき Copyright 田中修子 2017-02-08 22:55:42縦
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