街の灯り
葉leaf



切り刻まれた欲望をあとに
街のしたたる灯りの下で
男はコートの汚れをはらう
生まれ育ったこの街で
いま夜の表面に佇みながらも
男は限りない遠さの奥に囚われている
通り過ぎる日々に受傷して
男は葉のように散る

街はどこまでも散逸し
街路も建物も渦巻いている
過ぎゆく男女に輪郭はなく
男は謎を謎のまま解き放とうとしている
灯りは明るい分いっそうつめたい
街の灯りをゆっくり描画して
男は矢のように飛ぶ

街の血液はすでに凝固した
血の代わりに水銀が巡っている
男の孤独は毎日更新され
男の恋情は毎日継ぎ足される
街の灯りは男を染めるだけで
男はいつも旅の真ん中にいる
故郷の街は憎しみの街だ
街を完全に停電させ
男は火のように消える


自由詩 街の灯り Copyright 葉leaf 2017-02-06 04:10:41
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