冬の終わり、
時雨模様
描かれるいくつもの輪のなかで
消えてゆくだけの悲しみがあり
雪にはなれず
かすかな温かさにふれたなら、
降りつもることすらできなくて
一瞬だけ立ち止まり、そして
わたしの語る言葉の上を通り過ぎていくそれは、
まるで通り雨のようでもあり
わたし自身もまた、
誰かの通り雨なのだろうと気付く
通りすぎる雨の、ただ一粒のためだけに捧げられる名を、
わたしは今でも知らないまま
一瞬の感情を、ただ一つとして留められずに
それが去りゆくものであるのならば、去りゆくまま
何も描き出さずに、ただわたしの上を通りすぎ、
滲みこむのではなく、
すこやかな額の上にも留まりきれずに
こめかみへと一瞬で流れてしまうような、
そんな儚いものでもいい、と
残された言葉の中で考えている
たとえば優しさに満ちた眼差しの意味を、
沈黙にこめられた物語の続きを
留めることができずに駆け足で去ってゆく、
いくつもの雨粒を
わたしがそっと、
そっと小さく溜息をついたなら
そうしたら、立ち止まって
わたしを懐かしんでくれますか?
今日もまた、時雨模様