めぐり 潮音
木立 悟
蝋燭で世界を燃そうとするもの
茎も葉も無い花のあつまり
冬の陽を模した手足の舞が
風に風を刻む夕暮れ
冬と 水晶の霧と樹と
エメラルド 空に刺さる音
遺跡を分けるひとつの径
影しか居らぬ真昼の径
小さな響きが
大きな響きに絵を描き
枝から枝へ転がり落ち
凍りついた地を辿る
幾何学の湖面に潜む魚影
雪に降り立つ鳥の羽音
足跡 息
足跡
午後の明るい灰の胎児
枝の海のはざまの虹
巨きなまばたき
静かな湿り気
鳥のかたちの氷山が
川を無数に溯上してゆく
沈みながら笛を吹くもの
水の底で鐘を撞くもの
幾度も幾度も巡るうち
胎児は産み落とされていて
水没した街を漂いながら
降る雪に手をのばし微笑んでいる