セックスしたかった
末下りょう
セックスをもたらさないベッドがある
枕をはずして
もし何かをみつめてるとすれば
終わりのない色の
壁の終わり
空間にとっては軽すぎるものだろう
夕暮れに蛇をつかまえた
金はいつも夜になるとなくなる
だから誰もやらせてはくれない
美しい名称をもつ経口剤には故郷がある
なるべく静かに最後から一つ前の夜を待ってる
気紛れに発生した風のあしうらに触れて
知らないかたちの小さな森にひそみ
うなじを暖めあうめまいを生む猫たちは
優しい匂いの土を吐く
停電みたいな朝の水、話のないやわな体
埃を被って縮まるミカン
寒がりなおまえのはかなさとは
比類なき読み手
ある意味、初めから終わりまでおまえしかいない
海のない波際になって出ていく
一度もやらせずに
ほとびる唇にかすかな ら行音の泡を纏わせて
なんらかの焼け跡で鉢合わせたやつが
おまえに裸を着せる