セックスしたかった
末下りょう

セックスをもたらさないベッドがある
枕をはずして
もし何かをみつめてるとすれば
終わりのない色の
壁の終わり
空間にとっては軽すぎるものだろう

夕暮れに蛇をつかまえた
金はいつも夜になるとなくなる
だから誰もやらせてはくれない
美しい名称をもつ経口剤には故郷がある
なるべく静かに最後から一つ前の夜を待ってる

気紛れに発生した風のあしうらに触れて
知らないかたちの小さな森にひそみ
うなじを暖めあうめまいを生む猫たちは
優しい匂いの土を吐く

停電みたいな朝の水、話のないやわな体
埃を被って縮まるミカン
寒がりなおまえのはかなさとは
比類なき読み手

ある意味、初めから終わりまでおまえしかいない
海のない波際になって出ていく
一度もやらせずに

ほとびる唇にかすかな ら行音の泡を纏わせて

なんらかの焼け跡で鉢合わせたやつが
おまえに裸を着せる



自由詩 セックスしたかった Copyright 末下りょう 2017-02-03 01:25:46
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