光の街
末下りょう


きみのためになにも流されないような夜には
何処にも行き場がない

すべてのネオンサインに照らされて
きみは光の街のなかで成長していく
だからせめて泣き止んでいてほしい
安らげる誰かの隣に居てほしい

ネオンの膨らみは絶えずきらびやかな点描を
せわしなく行き交わせている
明るく呼び掛けられるたびに
なにも見えなくなり
とにかくなにかを聞き返しては
ぼんやりと何処かに回収されていく
完璧な行き先があるのかは知らないけれど
抜け目のない者たちとの華やかな駆け引きに酔えれば
何処にだって出向いていける
光の街にきみを見つけられる

誰かが破いたきみの服を
きみが破り捨てた夜を 喧騒が彩る
傷を隠さないきみの嘘ならなんだって構わない
もっと聞かせてほしい
同じようで同じじゃない同じような街の
光のジオラマの下で

なにかをただしたつもりになって
なにもかもを見誤っていた
身を切るように冷たい風や足に飛ばされてく空き缶が
無条件な愛の行為のように
なにかを託された車輪のように地面を転げていく

流れる人のなかにのまれるぼくを
忘れるにつれてきみはきみを愛せていく

在りもしない数の足音だけを街に響かす
つかの間の切分音
きみは街のネオンのなかで成長する
いつかみえなくなるまで

光るきみだけを見ていたい
あふれるネオンに託したその愛の行方を
鮮やかなネオンサインに求めたすべてを

光の海原からこぼれるほどの
きみだけの輝きを



自由詩 光の街 Copyright 末下りょう 2017-02-01 01:28:53
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