フェーズ
末下りょう

もうへんな言い合いやめようよ
卵が先か鶏が先か黄身が好きか白身が好きかきみが好きだ瞳が好きだ

すべてから切り離されたような二つの瞳の端がさ
神々に触れてさ 、
震えて濡れてくのが好き

ぼくらはさっきまでマッシュルームを肉だと信じ込んでた
これからはマッシュルームを肉みたいに食べる

寒いと腫れやすい扁桃腺のへんにあてられた
手の ひらの 点と線と面
そこが世界の盲点と慣性モーメントになって
毛糸の手袋を濡らさないように気をつける

最後を数えるための夜明けはいつもこない
アイスキューブを口のなかでごりごり転がしながら
ぼくの足を踏んで顔を近づけるきみは
凍った電柱に舌を張りつける遊びに飽きて
まっすぐ来てくれる

チョキできみに勝ったジャンケン
きみはそのままバイバイって手を振って行きそうで
ぼくの右手はずっとチョキのまま
たまらなく

風は吹きぬけて、風そのものは吹きぬけない
腕のなかのチョキの果ては
音をたてて破れる二人の面積

よそ見した隙に床で割れた卵が
朝からずっと黄身を崩さずにゆれてる
それは何度でも終わるために



自由詩 フェーズ Copyright 末下りょう 2017-01-31 00:44:31
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