恍惚二死ス
坂本瞳子

探偵気取りで
僕を追い詰める君は
実に卑劣な手段で
その機知を利用する

もちろん君のじゃないさ
僕のだよ

この僕の狡猾さを
叡智を
企みを
ものの見事に横取りして
明るみに曝してしまうんだ

饒舌にまくしたて
抗うことのできないように
縦横無尽に動き回って
気づいたときには雁字搦めさ

華奢な身体つきに
強靭さを包み隠し
ときに脆弱さを伺わせ
僕に優越感を与える

肌の滑らかさと
唇の柔らかさを
比べさせるほどに
小賢しく

左足の裏側を隈なく調べ
第四趾の付け根にある
小さな黒子さえも
見逃さない

微に入り細に入り
なにごとにも執拗に
故意に穿った偏見でもて
僕を嬲る

まあいいさ
楽しませてもらうよ
ほんのもう少しだろうがね
君に追い詰められるのは
決して悪い気はしないから


自由詩 恍惚二死ス Copyright 坂本瞳子 2017-01-29 11:02:11
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