仮装して岸辺に
末下りょう

濃くなる空
廃道には沖からの風
タイヤのない廃車
不可能な旅
消え去った日々
揺れるブイ
昔みた黄色いアドバルーン
多分、二足歩行するまえの記憶
今朝の愛についての討議
鮫と鯨みたいな
肌寒い
遠くて、近い
友の家
少し寂しい
もどかしい
星が降りだす
やっぱり切ない
愛しい
虚しい
落ち葉や枯れ枝に覆われたアスファルト
もう帰ろうか
まだ戻らない
共有した時間
そこから
また波がひく
また波がくる

写真、海辺の家、車のナンバー、友、事実1、瑞々しい窓ガラス、2色TP、やりかけの数独、半永久、缶ビール、猫、未来の懐かしさ、現在の半分、台所からの返事、ピスタチオの殻、干し草、博愛、うなされた言葉、化学物質過敏症、貝殻の乱獲、オケージョンの無効に

気分しかない
手のひらの感情線と脳溝の運命線をかさねた
窪みに挟まる
苦い光
嫌気

風呂に入って
古い映画をみた
映画ヨリ映画ラシイ映画ヲミテイル映画ニサワル白イ、オビノ、ベルって
射影と切断のなかに
距離が縮小して

仮装してきた岸辺の岩肌に 、
巨大な足りなさを


なによりも高い梯子で、どこよりも深く降りていきたかった
そこから果てもなく昇っていくために



自由詩 仮装して岸辺に Copyright 末下りょう 2017-01-28 01:28:07
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