朝が死んだ
wakaba
朝が死んでしまった日の夜
私は涙を流しながら台所で玉ねぎをむいていた
どうしてこんなことになってしまったのか
ただ真面目に生きてきただけなのに
どうしてこんな目にあわなければいけないのか
頭の中ではそればかりが溢れて決壊し
後ろ向きな言葉が心の底に流れこみ
呼吸がうまくできず狂ってしまいそうだ
嫌なことばかりが頭をよぎる
でたらめばかりが気にさわる
遠くで閉まるドアの音がやかましい
人のだらしないところが許せない
何度も何度も手を洗いたくなる
手についたヌメヌメが耐えられない
玉ねぎの可食部分が減り続ける
三角コーナーのゴミが増え続ける
めくれどめくれど夜は明けない
朝は死んだ
死んでしまったんだよ今日の朝
テレビはいつだって嘘ばかり
それに苛立つ私の心も嘘だらけ
面倒臭い涙ばかりがシンクに落ちて
現実はなにひとつ腑に落ちない
真面目に生きてきたつもりだけど
どうして駄目になってしまったんだろう
いったい何がいけなかったんだろう
私はただ
毎日を平々凡々に生きて
人を担ぐようなことはしないで
欲張らず波を立てず
暮らしていけたらそれでいいと
そう願っていた
ただそれだけだったのに