朝が死んだ
wakaba

朝が死んでしまった日の夜
私は涙を流しながら台所で玉ねぎをむいていた

どうしてこんなことになってしまったのか
ただ真面目に生きてきただけなのに
どうしてこんな目にあわなければいけないのか

頭の中ではそればかりが溢れて決壊し
後ろ向きな言葉が心の底に流れこみ
呼吸がうまくできず狂ってしまいそうだ

嫌なことばかりが頭をよぎる
でたらめばかりが気にさわる

遠くで閉まるドアの音がやかましい
人のだらしないところが許せない

何度も何度も手を洗いたくなる
手についたヌメヌメが耐えられない

玉ねぎの可食部分が減り続ける
三角コーナーのゴミが増え続ける

めくれどめくれど夜は明けない
朝は死んだ
死んでしまったんだよ今日の朝

テレビはいつだって嘘ばかり
それに苛立つ私の心も嘘だらけ

面倒臭い涙ばかりがシンクに落ちて
現実はなにひとつ腑に落ちない

真面目に生きてきたつもりだけど
どうして駄目になってしまったんだろう
いったい何がいけなかったんだろう

私はただ

毎日を平々凡々に生きて
人を担ぐようなことはしないで
欲張らず波を立てず
暮らしていけたらそれでいいと
そう願っていた
ただそれだけだったのに


自由詩 朝が死んだ Copyright wakaba 2017-01-26 22:35:35
notebook Home