Fw:
末下りょう

ずっと片目を瞑って─

まぼろしが氷をはった朝の
新鮮なドアノブ
静電気とひとつらなりの
なまあくび

冬の空気に刺さるしらふなガラスの不埒な断面 、
つつく鴉
首をあらう風の猫背に
かくれた
鳥葬の前触れ?

急速にさめてくスープを寝惚けて啜る姪っ子は
朝からずっと片目を瞑ってる
生活発表会の妖精さん役とひとつらなりの
なぞの循環系統
(うん、少しはや回しにそだてるおまじない)

色のないやわらかな石を投げる領域だった
窓の、そとの
電柱の薄いかげが
ぼよんと派手に弾んだ

瞼のような土の匂い
つやつやした水と炎の結球

朝から騒がしい鴉の急旋回に翻弄された
視角のぱちぱち
ここからだとよくみえない国とひとつらなりの
まじゅつが
ちいさな祝福を育んでるのか
冬の片目

 
多くの涙─

キキたちがこぼした 、多くの涙を
スイムする
歩いて
底のない浅瀬をゆっくり

素手と素足と素肌と素顔をさらしたかたまりに
硬い服を通して
眉毛を剃りおとして
全滅した生物たちの王国をあてにして
ゆく
ワンダランドに
おもたい水面に浮かぶ黄色い海藻を
ひろげて透かす空
そっけなく平板な胸にクモが青い糸の巣をはり
蝶をまっている

どこかの家畜たちの叫びを聞きつけて
沈黙する一団
たたんだ羽根やこっちをむく丸い眼
家畜たちや確かにいたものたちの愛撫を求めて
去りゆく一団
戻りゆく一団
近づくためにゆく一団

風も波もなく流されることもなく
背くスイム
歩く無垢


かつて海は
すべてのけなげな毒だったのかもと
夜なべして繕った残酷なチャイルドドレスは
多くの涙の
浮力に引き裂かれてしまいたいがために
背くスイム
歩く無垢のために

多くの涙の涙が
分泌する
涙の 、
漂流を
食らい、暗い 、cry ,
くらい


自由詩 Fw: Copyright 末下りょう 2017-01-24 01:32:32
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