荷ほどき
青の群れ

グッドラック、発したことない言葉
語感のよさだけが残る
旅立つ日の特別な高揚感は
からんだ糸をほぐす

まだカーテンのない部屋
白い靴下の大きな男たちが運び込んでいくダンボール
馴染んだ匂いのする荷物たちよ

フレーミングをばらばらに
光差し込む窓辺はあたたかい陽、雨樋に雪が残っていた
出入りを繰り返す白い午後
滴る水滴がつむじに落ちて
身震いをしたのを笑う人はいない

運んですぐの冷蔵庫は電源をいれてはいけないと言われました

ふいに増す光
大きな物音のあとの静寂

自販機で買ったミルクティーは温く
空気にさらされて冷えてしまった指先

誰も帰りを待たない部屋の

息を短く吐き出した
引いて、開けて、取り出して、繰り返す
酸素、二酸化炭素、強く結んだ紐をほどいていく
解剖のように中身が見える

はるか遠く、かつて馴染んだ匂いが解けて
やさしい不安が押し寄せても


自由詩 荷ほどき Copyright 青の群れ 2017-01-19 12:55:26
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