二羽の白い鳥
田中修子

下弦の月から放たれたように
斜めに白い線が奔っていた
夜の飛行機雲

こんな時間帯に
ずいぶんと低空に飛ばしている
旅客機か
観測機だろうか、と、君がいって
わたしは感心してたちどまる

君の愛しいひとは
津波にのまれて消えてしまった

そうして君は炎に
飲みこまれ
狂って走って
死ぬように生きてきた

星のない都会のきらびやかな夜に続く
むなしいような朝の静けさ
途上国の死んだ魚の女の目
死を売りさばいて生きる人々

君はずいぶんと
かなしい物知りだ

ながいあいだわたしの世界は
わたしの中だけだった

夢の中をずいぶん旅したし
木や石や川はいじわるをいわない
本は知りたいことだけ
しずかな声で教えてくれる

メアリ・ポピンズの皮肉っぽい笑い声に
ムアが咲き誇って三人が笑う秘密の花園
真夜中の庭に繋がる十三回目の時計の音

わたしはゆめみがちな物知りね

君のかなしいものしりと
わたしのゆめみがちなものしりがまざりあい
ポン!!
ってはじけて
これから
をみせてくれたでしょう

さぁ、晴れた青い空だ、陽光にきらめく青い海だよ

わたしたち、二羽の白い鳥

これからどこまでも一緒に
空翔る


自由詩 二羽の白い鳥 Copyright 田中修子 2017-01-18 23:12:31
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