めまい
水菜
氷のように冷たい指先
ステンドグラスに描かれているのは真夏の太陽で
収穫の喜びを謳ったきっと
昨夜見た夢の中で
黒鳥は白と黒の羽をひろげた
湖の中にできた波紋はいくつも音に触れるたび
ふるふると漣がおきて
あそこで真っ赤な顔をして
白くて柔らかな毛で覆われた耳あてをしているあの子は
鼻筋に傷を作っている
薄く氷を張ったかのように冬のそれでも柔らかな太陽の光をかえす湖と
黒いからだの黒鳥
夢の中で、暑い真夏の太陽と
氷が張り付いた湖
収穫の喜び
黒鳥
これらは全て同時に起こっていて
それは私が知りえないだけで
知りえないだけで、それらは全て同時に起こっていて
言葉は違っていても
私が今立つ地面のずっと先には
同時に違うあなたがいるのでしょうと
渡り鳥ならば知り得たかもしれないのに
此方はまだ枯れすすきが柔らかに踊っているのにねと
願いをステンドグラスに閉じ込めて
めまいがするりと私の中に滑り込んでくる