今日、電車の中で思いついた言い訳
ベンジャミン

その女の人は、ずいぶんと寡黙な人で
その寡黙さが
しきりに語りかけてくるのを
熱心に聞いていた

薄い手のひらでくるまれた
さらに繊細な指先は
紙袋のひもに引き伸ばされて
青く静止している

そろえた膝の隙間にある
隠すことのできない恥じらいは
偽ることを知らないでいる

聞かれたことだけに首を傾け
聞かれたことだけに動く唇

横顔を区切る前髪を
ときおりかき上げる仕草は
一つずつ会話をめくってゆく

それ以上に

たどれない視線を流す瞳の奥や
さらには勝手にたわむれる毛先やらが
しきりに語りかけてくるのも

別れ際
その人の後姿が
「また会いましょうね」と読めてしまうことにも


当たり前に、うなずいてしまう





自由詩 今日、電車の中で思いついた言い訳 Copyright ベンジャミン 2005-03-05 23:35:27
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