嘘つき地蔵
水菜
「ぺらりと捲れたノートの裏側に僕の嘘つき地蔵は眠ってる。目は閉じてるんだけど、口は開いてるの。ちょっと不気味な絵なんだよね。僕が描いたんだけど。あんまりにも愛着が有り過ぎて、嘘つき地蔵をアニメーションにしちゃったよ。
無声映画みたいに何もしゃべらないんだけど、僕の絵は不気味に光ってるよ。
出来上がるのに3年も掛かっちゃった。
舞台となる廃墟めぐりもしたんだよね。もう使われなくなった学校とか幼稚園とかさ。ガス爆発しちゃったあの廃墟ビルは凄かったな。
うん、音入れてないよ。ぴったりくる音見つからなかったんだ。何入れても僕の絵と合わないって言うかさ…、僕の愛すべき嘘つき地蔵が嫌がっちゃってね。無理なんだよね。
うん、嫌がるとね、目が開くんだよね。僕の嘘つき地蔵。うん、ちょっとだけなんだけど…僕それ見たくないからさ、出来れば良い環境で作ってあげたいじゃない…?だって僕、嘘つき地蔵好きだし。可哀想なことしたくないんだよね。
え、うん、廃墟を舞台にしたのは、僕の嘘つき地蔵人が嫌いだもの。なんか惹かれるみたいでね、相性良いのよ。
え…、僕と嘘つき地蔵の相性…?どうかな…、好かれてると良いんだけど、正直自信がないかな、片思いでも僕は別に気にしないけど。
え、見たいの…?僕の嘘つき地蔵のアニメ。うーん、どうしよ、じゃ貸してあげるけど、必ず夜は避けてよね。夜出てきちゃうからさ。実体化しちゃうとさすがに僕も困っちゃうし。
…え、うん、ちょっと実体化しちゃったことあってね…、え、うん、僕のアパートに10体はあるんだけど。皆元気にしてる。
僕の部屋お陰で人入れられないんだよね。嫌がっちゃうから。
…え、なんで嘘つき地蔵って名前なのかって…うーん、ちょっと話すと長くなるんだけど…正直言いたくないし僕も嫌なんだけど…、聞きたいの…?
…うーん、分かった教えるよ。なんでかっていうとね、僕昔凄い嘘つきだったのよ。…でも、嘘ってさ、嘘って分かった時に大変なことになっちゃったりすることない…?え、君嘘付いたことないの…?そっか…、じゃ、分かんないよね…。うん、大変なことになるのよ。
で、あるとき僕嘘つき地蔵を作ったの。ほら、僕の代わりに嘘を背負ってくれないかな…とか思っちゃって。…そしたら楽なんだよね。何だかさ。
で、大変なことになる前に嘘つき地蔵を書いたの。ノートの端っこに。そしたらさ、嘘が嘘にならないっていうのか、…まぁ大変なことにならなくてすんじゃうのよね。
…あー、そういうの身代わり人形って言うんじゃないかって…あー、そうなんだ…そういうの僕詳しくないから…へぇ、でも、じゃそれなのかもね。僕の嘘つき地蔵もさ。
うん、うん、持ち主の災厄を背負ってくれる存在なんだ…そっか…、そういう人形にされた方は堪ったもんじゃないよね…自分の災厄じゃなくて他人の災厄でしょう…あー、そうかも気付いてないのかもね。うん、うん…。
ま、良いや、じゃこれ僕の作ったアニメね。嘘つき地蔵。くれぐれも夜は避けてよね。見るの。ああ、そうそう。大丈夫よ。うん。じゃね、ありがとう。これ。参考になるよ。
あ、これ君が作ったんだ…。うん、ありがと。僕も夜は避ける。はは。うん。
あ、感想聞かせてよね。うん僕も感想必ず言うよ。じゃね」