濁り
水菜

汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚いきたないきたないきたないきたない
この皮膚もこの髪もこの手足も爪も指も何もかも
全てを洗い流してしまいたい
剥がして清めて穢れを取って何もかも初めからやり直したい
無の状態に戻って何もかもリセットしてしまいたい

冷たい水のなかに女は身体を沈めていく
何度行ったか分からない滝に打たれに行くのである
たった一人で
女が滝に打たれていることを女の周りの人間は誰一人として知らなかった
女は言うつもりは無かったし、周りの人間もそこまで女の行動に興味が無かったのだろう
透明で冷たい滝に打たれている時、女は無になれた
感覚は麻痺してしまったようにただただ滝の強さに身を任せて女はただただ足元を見つめていた
弾けた水が泡状になってばらばらに散っていく
薄く付いた緑色の苔と少し濁った水面
女の肌色だけがゆらゆらと水面の底揺れていた
不意にふるりと寒気を感じて、女ははっと我に返る
失っていた感覚が再び戻ってきた
寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒いさむいさむいさむいさむいさむいさむい
寒さしか感じなくなる
女はそうしてようやく滝の外へと身体を出した
白い肌はぼんやり青白く光っているようで濡れた髪からは冷たい雫がぽたりぽたりと滴っている
用意していた白いバスタオルに身を包むとほうっと女は息を吐いた
濁った色の水の底をぼんやり思い描きながら


自由詩 濁り Copyright 水菜 2017-01-17 13:50:02
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