微熱砂
小林螢太

空にはもう
手が届かない



真夜中、
潤いが消失した部屋で
繰り返し観たものは
果てしない砂漠での蜃気楼、の夢

瞳を覆う
色が無い眼鏡の、曇りをふき取っていく
余分なものが見えないように

(分かっていたんだ

黒点が浮いたバナナの
甘く発酵した退廃のように
単に、陳腐化する
だけ、だけ、だ、け、、、



 *





砂が、ちゅうに舞っている



錆びた身体の循環を再構築し
頭の中のノイズをフィルターにかける
誤解された比喩に恩赦を求めて、

(華やかな歓声/反転/暗転

わ、わたしは
全てが限られた、この矮小な花壇の中で
与えられた胞子を
気まぐれな雨しか降らなくとも
すべてに花を
咲かせたいだけだ、けだ、だ、、

(モノクロに斜陽した花園の中で立ち止まる
(闇のようで真っ黒な薔薇が傷を広げ、痛む

澄み切った奇跡の泉に浸かっていたい



傾いたものたちへ

寂れた公園の砂場で
その砂の、一粒一粒が
風に舞い、或いは乗って
空を目指すことを
あなたは馬鹿なことだと言うのですか?

夜が明けると、やがて砂は
雨に流され、濁流となって
河口へと流れていく

しかし
もうすでに
河は、無くなっている





自由詩 微熱砂 Copyright 小林螢太 2017-01-15 15:51:00
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