彼との淡い思い出に。
ヒヤシンス


 風の奏でる色彩はいつも淡色。
 僕の奏でる色彩はいつも原色。
 
 君は過去に向かって生きているんだね。
  僕は過去に縛られているつもりはないよ。
 そういう意味じゃないよ。
  どういう意味?
 君の全てはセピア色でできているんだ。
  ???
 
 彼は16才で逝ってしまった。
 きっとその時からなんだ。
 僕の心は原色で満たされている。
 僕は原色が嫌いなはずなのに。

 優しさの中に弱い嘘を見つけたんだ。
  優しい人が嘘なんてつくの?
 優しい人は強くなくちゃいけない。
  ちょっと疲れちゃったよ。
 
 そうだ、もう疲れたよ。疲れた。
 どうやら僕はセピア色の中に生きている。
 独りの時くらい弱音を吐いても良いだろう?
 彼はきっと優しく微笑んでいる。

 原色の心の状態に疲れた僕は港の公園に行く。
 そこには緑の木々がいる。花達も咲いている。
 優しく微笑む人達がいる。
 彼らに嘘は無く、力強く生きている。

 彼らが僕の原色を優しさで包んでくれる。
 港を行き交う客船が風に潤んでいる。
 その時ベンチに腰掛けた僕にも風が吹いた。
 きっと彼が僕に風を寄越したんだ。
 どうだい、僕の心の色彩も少しは淡くなっただろう?

 それならば、

 風の奏でる色彩はいつも淡色。
 僕の奏でる色彩もきっと淡色。
 
 


自由詩 彼との淡い思い出に。 Copyright ヒヤシンス 2017-01-14 06:02:51
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