もみじの手
服部 剛
仕事を辞めてから
5才の周ちゃんと過ごす時間が増えた
染色体が一本多いゆえ
絵本を読んでも
あーうー
歌を歌っても
あーうー
だが時折、大きな黒目をぴくりとさせて
第六感で<何か>を感じているらしい
開き直ったパパは
がんがんろっくんろーるのCDを流し
小さな両手をつないで Dance Dance ♪♪
パパの大きな手の平から
楽しい波動は…伝わり
けたけたけたけた周ちゃんの喉から
鈴の笑いは鳴り出だす
10分…20分…と踊るうちに
少々疲れた周ちゃんは
くにゃりと坐り
パパに凭れ
微かな鼾を始める
仕事が忙しすぎた頃はあり得なかった
小さないのちの体重を
あずけて
もみじの手をぴたり
パパのあぐらの足にのせて