トナカイの足音[イングリッド・ヘブラーを聴いて]
竜野欠伸

一瞬の奇跡の近くに
永遠の軌跡がずっと続いた
花瓶に差した薔薇を彩る橙色の呟きを待っていて

僕の遠い夜空にもある
シケモクは必ず捨てた方が良いだろう
妻が影で吸わないように

おせち料理の請求書が届くはずで
もはや寝正月は想い出の向こうにある
あの鐘を鳴らすのは誰でもない年の瀬だった

戦争前に生まれ二〇世紀を超えて
モーツァルト弾きの彼女が奏でる旋律が宇宙に鳴る
妻から彼女の曲想が僕にはどう聴こえるか尋ねられて

やっぱり音階では聴こえない?妻は僕の答えを待つ
ちょうど鼻唄のような音色だよと伝えながら
いつの間にか部屋から妻が居なくなってピアノを弾いていた

幻のサンタクロースは最果ての雪道にては残る足跡
夢のなかではトナカイの足音がそっとして
白と黒の鍵盤を弾くのが聴こえていた




自由詩 トナカイの足音[イングリッド・ヘブラーを聴いて] Copyright 竜野欠伸 2017-01-13 19:49:26縦
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彼女に捧げる愛と感謝の詩集