てふつがひ(蝶番)
水菜
蝶番の語源は、蝶の番
蝶番から、蝶がひらひらと生まれ落ちる
消えた戸の先
そこには、日本庭園が広がり
お池や、筑山、庭石に
水の流れを
滝を模し、
石を組立て
四季折々を表現された様式美
春の名残の桜が散って
そこに蹲る幼い子
「わたくしには、もう母はおりません」
そっと耳元に吐息がきこえて
ふいっと振り向くと
真っ白な蝶の群れがなだれのように私の上に降り積もりはじめ
次第にこころがきえていく
幼子のこえがするよ
「春の名残の薄紅色の桜のこころのあたしのこころ」
ふふふっと
花のつぼみがふるえるように
繊細なわらいごえ
真っ白な蝶におおいつくされながら
こころがしろく染まっていく