てふつがひ(蝶番)
水菜

蝶番の語源は、蝶の番

蝶番から、蝶がひらひらと生まれ落ちる

消えた戸の先
そこには、日本庭園が広がり

お池や、筑山、庭石に
水の流れを
滝を模し、
石を組立て
四季折々を表現された様式美

春の名残の桜が散って

そこに蹲る幼い子
「わたくしには、もう母はおりません」

そっと耳元に吐息がきこえて

ふいっと振り向くと

真っ白な蝶の群れがなだれのように私の上に降り積もりはじめ

次第にこころがきえていく

幼子のこえがするよ

「春の名残の薄紅色の桜のこころのあたしのこころ」

ふふふっと

花のつぼみがふるえるように

繊細なわらいごえ

真っ白な蝶におおいつくされながら

こころがしろく染まっていく



自由詩 てふつがひ(蝶番) Copyright 水菜 2017-01-10 22:09:32
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