盆地の友人
末下りょう


盆地は風が微弱で頻繁に空気がたまり大変だと聞くぞ

だが平地をぐるっとする山脈の壮観な岩肌にぶつかる太陽やら月やらの繊維を纏った風が
大空からどえらい風神様になって渦巻き吹きつけると聞くぞ

えげつない砂嵐がすっぽり盆地をくるみ町中のテレビチャンネルをごっそり懐かしの砂嵐にすると聞くぞ
夜には山脈の向こうに銀色の塔がそびえ立つと聞くぞ

おまえがそそくさと軽トラで引っ越してった盆地は
女子供がいないと聞くぞ
なんともなまくらなとこだ

とりあえず河原のぬめぬめ石で遊べよ、商店街の猫の
強めの仰角は
だいたい愛嬌だと聞くぞ
夏はたまに日本一暑くなるんだってな
冬はどーだ
盆地の墓地の鳥たちの鳴き声はよく響くと聞くぞ
盆地の電磁波にカラスは乱舞すると聞くぞ
あの子に雀がとまるポストからボンクラな手紙でも出せよ
メールやLINEじゃからっきしなのだから
たまにはしたためろ

窮屈な首をのばして見たら
いまは見えないおまえが
あきらめるようにひょこと 、へんな窪みから
でこを出すと聞くぞ



自由詩 盆地の友人 Copyright 末下りょう 2017-01-10 02:14:09
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