工場とららぽーと
吉岡ペペロ

優しさと痛みをくっつけてくれるのは

あたたかさだった

優しさと痛みだけなら傷つけるだけだった

冬の光のような

さわやかな絶望と楽しげなかなしみ

太陽と地球の距離、そのあたたかさが

優しさと痛みをくっつけてくれるのだ


油の焼けた匂いが漏れ漂う24時間操業の工場のよこを通り抜けて家路を急いでいた

昨日ひきこもりの息子とららぽーとで待ち合わせをした

前から彼は財布が欲しいと言っていた

どうせ買うなら自分で選んだほうが良くないかと思いららぽーとから息子に電話したのだ

夜間無人の工場には窓明かりがなく工作機械の声がうっすらと聞こえるのみだった

妻から息子が暴れていると連絡が入り残業を切り上げたのだがこんな時間だった

ららぽーとの入り口で待ち合わせた息子は建物のなかに入ることが出来なかった


優しさと痛みをくっつけてくれるのは

あたたかさだった

優しさと痛みだけなら傷つけるだけだった

冬の光のような

さわやかな絶望と楽しげなかなしみ

太陽と地球の距離、そのあたたかさが

優しさと痛みをくっつけてくれるのだ






自由詩 工場とららぽーと Copyright 吉岡ペペロ 2017-01-09 16:09:27
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