螺旋の上
プル式

ある日僕の半分の世界が消えた
右の目と左目は統合され世界は
無意識に歪めていたその虚を剥がした
腫れ物を触るように言葉を選ぶ人
何も変わらないように言葉を交わす人
それぞれのそのどれもが過去の僕だった
そうして僕は少し冷めてしまった

車は人に優しくない
街の喧騒は人に優しくない
人の目は人に優しくない
優しさは人に優しくない
言葉は人に優しくない
仕事は人に優しくない
世界は優しくないもので溢れている
そんなことを思ったある日
僕の友人が言った
どうやら僕は笑わなくなったそうだ
大丈夫かと聞く代わりに
友人は僕と一つになった

僕の世界が二つになった
一つ増えた世界は明るすぎて目がくらんだ
眩しくて見えないと言うと友人は笑った
世界はこんなにも美しいのだと
笑って笑って僕を連れ出した
きらきらと光る世界の中で
あの日消えた僕の半分が黒く
ガサガサとした塊になっていた
怯えるようなそれを抱きしめると
友人は泣いていた
嬉しそうに泣いていた

ある日僕の世界は三つになった
優しくないもので溢れた世界の中で
暖かな日差しに僕の両手は引かれている
僕は笑っている
あの日消えた世界の半分はもういない。


自由詩 螺旋の上 Copyright プル式 2017-01-08 00:09:11
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