鏡振街
木立 悟






時おり止まり
時おり流れる時間の上を
雪と羽はすぎてゆく
星に棘に傷つきながら


雪夜の森に星雲が降り
倒れた霧の塔にまたたき
朝の月 昼の月のふちどりが
消えることなく重なってゆく


人工の瀧を滑る水鳥
山の斜面を覆う灯の群れ
湖面を見つめる白い生きもの
湖面を歩み 消えてゆく


夜の歪みに映る夜
双つはずっと向かい合い
やがてひとつが飛び去ってゆく
ほどけては昇る白を残して


森を囲む森の幾つか
虹のかたちの径に分けられ
散る灰や金 緑むらさき
ひとつの枝の葉のように震える


音の無い滴
小さな歴史書
隙間なく
常に常に降りそそぐもの


槍 鴉 墓
たくさんの短い影が打ち寄せ
街を淡く照らしつづけ
径を鏡に変えてゆく





















自由詩 鏡振街 Copyright 木立 悟 2017-01-03 09:17:13
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