幽霊たち ☆
atsuchan69

まだ生きている

夥しい数の幽霊たちが街をゆきかう

様々な商業施設へ殺到する

贅沢な食事を提供する店に行列ができる

そしてあの世からの噂が

たちまち幽霊たちを不安にさせる

駅の改札口を何十万もの幽霊たちが通過する

あの世からの噂が

今日も幽霊たちを旅立たせる

空港にはあの世と似た場所へ旅立つ幽霊たちが

或いは、あの世と似た此処へやって来た幽霊たちが

下着や洋服を詰めた車輪の付いたトランクを手に

不安とは反対の方向へ

或いは、不安ないつもの場所へ帰るために

ジェットを噴いて飛び立つ巨大な旅客機を待って屯する

そしてあの世からの噂が

幽霊たちを熱狂させる

テレビジョンには地獄のような歓びが

テレビジョンには天国のような憂いが‥‥

そしてあの世からの噂が雑音に消されてしまうと、

ほんの束の間、幽霊たちは安心する

それは

まだ生きている

夥しい数の幽霊たちの汗ばんだ顔が

息づかいが

飾らない生活が

今日もあたりまえのように

たぶん

そこにあるから





自由詩 幽霊たち ☆ Copyright atsuchan69 2017-01-02 10:08:05
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