平成38年までに再開発
うめバア

財布にまだ二千円ある
エレベータより歩道橋で明治通りへ
5時、夕日傾いて
なんか悲しくてどうでもいい

見てる見てる
渋谷の再開発
大きなクレーンが強そうだ
どでかい穴を掘削機がドルドルと掘って
あちらこちらが白いついたてで覆われる
歩道橋の上からカメラを持って
中国や、欧米の観光客が

もしも、明日かあさってには
この町を去らねばならない
一瞬のツーリストなら私も
無残にあいた虫歯の穴みたいな場所を
自撮りしてにやつくのかも

引きはがされたビルの壁から
80年代や90年代が急に出てきて
ちょっと狂いそう
裸足で歩いてたころの自分も
女友達も、彼たちも全部
あそこ角からぞくぞく

街頭スクリーンが感情をかすめ取ってさ
低音聞かせて走りゆくアドトラック
終わってく感じに似合う派手さ加減

こういうのいいでしょって全部
カワイイ女の子、男の子
年寄りは怒りで満ちてるみたい、でも
若いのもキツいんだよね
自分何歳? 何年生まれ?

明日もあさってもしあさっても
怒りもいらだちも切なさも無力感も
どこへも行けない人間もいるのだよと
あのスーツケースの人に教えてあげたら
きっとまた、笑うんだろう


自由詩 平成38年までに再開発 Copyright うめバア 2016-12-21 15:50:25
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