耳を澄ます (試作品)
もっぷ

しあわせ って意味も知らずにそれでも
しあわせになりたくって産道を出てきたのだと思う
決意をして 決意通りに堪えて生きてきた
泣いて泣いて泣いて泣いて いまもまた
わたしはいったい誰なのだろう
ときどき失う
いつもではない
普段はかなしい それ だと捉えている
間違えましたとけれどもう帰ることは易くはなく
待つか自決かいずれにせよ さぞかし苦しく孤独な

たぶん 思っていたのは
あたたかなこんがりトースト
こがね色の美味そうなのがとろりと いよいよ
口に運ぶばかりのしあわせ
かならず
かならず母さんのいる食卓であたり前にかじりつく けれど
からだのどこかは感じているはず たどり着いたと
産道を出てきて良かったのだと このしあわせに

そのしあわせにたどり着けずにこの寒さ ひもじさ さびしさ
まして 身の、自由の危機SOS

かなしみっていう それは なにに、でも避けがたく
森羅万象はだからみな詩としか呼びようもないのだろう
夜道に転がっている忘れ去られたちいさな釘一本にしても
歌っているから 親しいかなしみの旋律を
十二月十八日、詩は飢えをしのげない、
けれど夢にみていたトーストだとしった、なみだの味の。



自由詩 耳を澄ます (試作品) Copyright もっぷ 2016-12-18 06:54:02
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