とある一日
ただのみきや
*吹雪
また寝過ごした
慌ただしく時間を折りたたんで
結露の向こう 誰かが叩く
風のふりして泣いている
葉牡丹
あまりに冷たい断り文句じゃないか
あまりに見事な葉牡丹じゃないか
《――わが空想の名において》
ポケットから青虫ひとつかみ
そっと置き去る
**吹雪
震えて
撓む木々
逃げ去る雪の群れ
光はなく闇もない真昼ましてや情事など
時は平静 澱みもせずに
ベンツ
思わせぶりのやさしい笑顔で
あれこれ攻めさせて
熱く語らせておいて
「いらないわ」――ベンツが止まった家
ああ夢見る燐寸を摘み消す
女!
***吹雪
風は切り裂き 辺りは暗い
吹き溜まりの雪に足をとられ
かじかむ頬 鼻水は止まらず
こみ上げる笑い背中の真中辺りから
退社
一日が閉じる月ように
儚さと空しさ 心地よい脱力
微弱な発泡が続いて
夢でも現実でも差し支えない
たぶんこれもひと綴りの詩
《とある一日:2016年12月17日》