だがドボルザークが鳴ったじゃないか
天野茂典

  新鮮な空気を吸う
  一日中部屋に籠もって
  セックス・ピストルズのビデオを見たり    
  携帯電話を操作したり
  パソコンに向かったり 
  カーテンを閉め切った部屋の中にいて
  息苦しくなってしまった
  窓をあけてみた
  新世界だ
  ひんやりした空気が細胞にしみわたる
  部屋の中に大気が入り込んでくる
  ファンヒーターで暖められた空気が
  ピンと引き締まる
  これはひとつの音楽だ
  パンクではないクラッシクだ
  クラッシクなどほとんど聞かないが
  パンクではけしてない
  セックス・ピストルズは面白いが
  淀んだ青春の暴力ではない
  たまにはぼくもスーツを着なけりゃ
  ッて感じ
  どうだんつつじの上に新雪
  大学の駐車場にも
  牧場にも雪
  雪と遊んでいる子どもはいないが
  さっきまで
  汚れちまった悲しみに
  きょうも小雪がふ*っていたのだ
  童心に返るよなあ
  かまくらを作って遊んだっけ
  雪合戦や
  雪かきも
  いまはただ眺めているだけ
  花見酒もやらない
  一杯やりたいなあ
  ほあんとしてゆるくなる
  あの感じ
  花鳥風月
  陶酔している
  今日は何万人の人が
  雪見酒に浸ったろう
  ぼくは凛として新世界
  ドボルザークにつきあったのだ
  アメリカ 新世界
  日本もまた外国人にとっては
  素敵な新世界なのだ
  換気は終わった
  美しい雪の夕やけは見えなかった
  だがドボルザークうが鳴ったじゃないか

  君の耳にも聞こえているかい




              *ビデオ「NID AND NANCY」
              *中原中也
               2005・03・04
  


自由詩 だがドボルザークが鳴ったじゃないか Copyright 天野茂典 2005-03-04 16:14:07
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