ピリー、僕にその紙束を一つよこせ。こどもが花をちぎるような仕草で。
竜門勇気


8月が始まる頃の欲望は
冷めた満月みたいに膨らんでる
飲み込もうとしたって
変に甘くって
吐き気がして痩せちまいそうだよ

ギターの弦を巻き直そうとしてるんだ
なにもかもがでたらめになってるって気づいたから
風がびゅうびゅう鼻水をひっぱる
でたらめはもう、僕の一部みたいだ

消えかけた火をもう一度
柔らかい言葉で灯そうとした
焦げた紙くずが舞い上がる
なぜこんなところにいるんだろう

ギターの弦を巻き直そうとして
なにもかもでたらめになればいい
汗が涙が枯れ果てたあと
絶望が残るならもう、答えが出たってことだ

流れる匂いを探してた
さっきまでよりまともだぜ
まともの果てに何が有るんだろう
強さの獲得は自覚を手放すんだろう

消えかけた火をもう一度
触れかけた日をもう一度
残ったまともに絶望を

世界を旅するために
なくすために
石鹸の匂いのする絶望を


自由詩 ピリー、僕にその紙束を一つよこせ。こどもが花をちぎるような仕草で。 Copyright 竜門勇気 2016-12-16 08:44:00
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