輪郭に関する考察
小川麻由美
文字をしたためる時
思わずため息が出る
感嘆のため息
消衰のため息
息には変わりないけれども
色が違う息たち
私の口からこぼれる息は
一体 どんな色だろう
嫌いな色などないから
どんな色でも構わない
受け止めてみせる
迷いは 無くなりつつある
ひとつ こだわりがある
インターナショナル・クライン・ブルー
あるいは IKBとも呼ばれる 青
IKBには 白 これは揺るぎない
IKBのマチエールは マットに限る
そうそう 文字の話に戻らなければ
文字をしたためる時
思わずため息が出る
私の口からIKBがこぼれる時
そんな時は訪れるのだろうか
マットな仕上がりのため息は
無限を察知できるはず
軽はずみに無限なんて
言っていいはずはない
けれども 夢を託すこと
それは私にも許されるはず
無限の境地に至る思慮
そんな境地に至れば
私の口からIKBがこぼれることだろう
IKBの色をした私のため息は
この世も あの世も 境界のない
中心もなければ 周辺もない
輪郭は滲み消えて行く
なんたる深淵!