魔法が使えないからって割り切りたくないんだ
カマキリ

彼らは殺風景な部屋でいつか許される時を待っている
猫舌の私はそれを笑えない

朝食はトマトで、豪華な食器が小刻みに震えている
ひねもす自問自答を繰り返す
真っ白だった壁と心にはシワができはじめていた
大きなドラゴンに攫われるのが先なのか
ロッキンチェアーのゆらゆらに溶け込むのが先なのか
縮小された楽園で私は未だに答えが出ないのだ

今日も救われなかった彼らが
至る所で頭を打ち付けだしたと同時に
天使は買い物袋をぶら下げてドアをノックする
結局、天国への階段はあらわれなくて
彼らは膝から崩れ落ち長い食卓への道を睨みつけた
夕食もトマトで、豪華な食器が小刻みに震えている
咀嚼して一緒に飲み込んだ希望の二文字を
ほんのり温かくなった腹に抱え込んで
つぶやきながら眠り込むのだ

だから私は
魔法が使えないからって割り切りたくないんだ
少し指を舐めて意識を手放した


自由詩 魔法が使えないからって割り切りたくないんだ Copyright カマキリ 2016-12-07 19:02:28
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