入場券
梅昆布茶
ふと思ったのだけれどね
人間には通気孔が必要だってこと
きっとどれかの上着に入ったままの入場券もいつかは必要なんだ
なくてはならないものなんてそんなにないんだけれども
たやすい自由はいつも風に舞う埃
形は変化して止まず言葉はさらさらと滑りおちてゆく
時代の奥行なんて僕にあるわけがない
歴史の重層とかももちろん持ちあわせてはいない
なにものにもなれない夜だけがジャングルを彷徨して
彼女に空っぽだと指摘された僕の失意を
評価されることに疲れてしまった日常を
僕が失効するまえに取り戻さなければならない
逃げる程に追ってくるあるもの
足音と影はいつか僕の襟首を掴まえるだろう
そのまえにその姿をたしかめねばならない
遅すぎることはない
歩を進めるための道にとって
過去を亡き骸にしない現在を
たとえ明日がなくとも
踏みしめてゆく生命でありたい
不完全な事を理由にしない自分を確かめるために
また古い上着のポケットに忘れ去られた入場券をさがす