ひとつ 水音
木立 悟






海の底から立ち上がる城
瓦礫の泡 草の鎖
空と樹 樹の前の樹が重なり
骸のように立ち尽くす


霧と岩は夜に溶け
雷雲は野外の舞台を照らす
山の裾野を登る波音
水の柱を廻す音


閉じかけた目蓋
雨の指
どこまでも光に挑みながら
どこまでもどこまでも敗れゆく


点る胸元
暗闇の糸
欲するところへゆくがいい
神は常に欠けたものなり


火傷する 風に
火傷する
砂糖と脂の雪の子が
羽の無い穂に羽を与える


ざらついた陽を呑み込みながら
多くの骸を踏みしめながら
水がつくる水のかたちに
死ではないものが降りつづくのを聴く


城は再び 海に倒れる
飛沫のなかを
痛みばかりが生き残り
次の生へとつながってゆく






















自由詩 ひとつ 水音 Copyright 木立 悟 2016-12-03 23:23:48
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