46×3
ただのみきや

アトリエに 違和もなく 海の 笑む おと
感傷の 気まぐれに 黒い蝶 化粧台で 殺し
逆らえない 四十万に 鈴の かし 空へ  
ただ 近く 月を 手に 取って
泣きながら 睨む ぬるい 眠りの 野辺に
花は 火のように 震え 返答を 欲し
魔性 未満の 娘 眩暈の 模倣か
八重に      夢裂く     世迷言
らしからぬ 離反 坩堝の 恋情 ろくでなし!
わからずや!   を     ――云々と


雨の雫 石を奏で 後ろめたさの 円環に 織る
過剰な 絆は 朽ちて 穢れのない 懲らしめに
サフラン色の 死が 直ぐにでも 鮮明な その朝の
手綱たずなのない 血のうねりに 告げることなく 天秤を 止めて
梨のような 尼僧の 塗り込められた 願いと 呪い
白濁し ひび割れても 腐敗せず 睥睨する 本性は
まだら模様 水音の 向こう 迷走する 盲目にかつ
矢羽根立ち    百合のよう    幼女の手に
裸体は爆ぜ 燐光 流転 冷静な 牢獄の蝸牛よ
侘しさ      を       運河へ


飽きもせず いつまでも 生み続ける 詠嘆の 丘に
書き残す 霧の中の 苦悶 獣の 呼吸
さかしまの 白菊へ 透き通る 蝉の翅 遡上そじょうする歌声を
淡々と 千切り 土に還す 手の中の 戸惑いは
為す術もなく 煮えたぎる 抜け目ない 捏造の 逃れ
はかなさの 膝枕 ふざけ合う 変幻に ほどかれる
真砂の時 蜜柑色した 胸元に 目を伏せ 黙し悶えて
焼け焦げる     赦しのない      揺籃へ
螺旋に果てて 理性は 瑠璃色の 霊を 論じはしない
忘れられない顔    を      雲母のように





                   《46×3:2016年12月3日》








自由詩 46×3 Copyright ただのみきや 2016-12-03 19:38:06
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