深く高く
倉科 然

メモ帳に書いた空は真っ黒に塗りつぶされ星々の輝きも見当たらず
まるで僕の心の内を書いてしまったようで
今日も中央線が止まったが人身事故ではなかったようだ
ほっとなでおろしたその胸中は誰のためのものだろうか
ホームは電車の遅れで人がごった返していたが
僕の心の中は深い深い深海のように静かだった
それはホームの屋根の隙間から
グラデーションに染まり始めた空に一番星を見つけたからか
やっと到着した電車から降りてくる子連れを押しのけ老人が席を取る
希望と終わりが交差する中央線快速
この世界に希望があるならそれはきっと押しのけられた母子だ
僕は深い深い深海から一番星が上る空を見ながら思う


自由詩 深く高く Copyright 倉科 然 2016-11-29 00:07:15
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