汐風
草野春心



  瞼のなかの海で
  灯りをつらね 夜船がとおくなる
  汐風がしろい帆を滑らかに膨らませ
  幼子のような波音をしまいこんで微笑う

  わたしたちは魂の此方側に立っている
  動かない時の中に開いた銀の花火のような
  ぼろぼろの月が 遥かな所からひかっている
  また、汐風が 幾重にもわたしたちを閉ざしていく



自由詩 汐風 Copyright 草野春心 2016-11-27 11:18:04
notebook Home 戻る