朝の交差点
葉月 祐
街路樹は衣を脱ぎ去り
湿り気のある白い羽衣を
その身に纏っていた
落ち葉の変わりに
視界を奪うのは
真綿のような結晶の群れ
通り過ぎる車達は
ワイパーで懸命に
温もりを奪う真綿を除けた
傘を持たないわたしは
両手で必死に
髪や肩を濡らす雪をはらい
太陽の輪郭ひとつ無い
冷たい朝の上に広がる
白い空を見上げながら
頬に走る冷たさを感じている
足元には
雪の衣を着せられ
凍えきった銀杏の葉達が
声もなく 横たわっている
その葉を静かに踏めば
パリリ と
形を失う瞬間の銀杏の悲鳴が
クラクションよりも鮮明に
わたしの耳に響いた