与える
あおい満月

私よ、
手のひらにはなにもない。
そのなにもないからだから、
何をうみだせるのか、
常に問いかけよ、
まっすぐに、
大きく目を開いて。



どこにいるのかも、
わからない場所の空は、
今にも血が降りだしそうな、
真っ白な空だった。
夜明け前のように暗い、
部屋の片隅で裸の腕を抱きしめると、
鈍い痛みが走る。
昨日、刃物で何度も切りつけた傷が、
呼んでいるのだ、
まだ死から永遠に近く遠い場所だと。

**

鳥がいない鳥籠を持って、
赤く青い鳥を探して歩いている。
私の背中には、
羽根が片方しかない。
もう片方の羽根は、
まだ見ぬ誰かが持っている。
雨の降る雑踏で、
肩がぶつかって振り返る。
片方の青い羽根、
空っぽの鳥籠。
私を見つけたその瞳は、
真っ直ぐにこの腕を抱いていた。

***

繋ぎあった手のなかに、
あたたかな生き物が踞る。
赤く青い小さな鳥が、
私たちのなかで眠っている。
素肌の腕(かいな)のなかで、
私たちは今、
互いの傷に命を与える。




自由詩 与える Copyright あおい満月 2016-11-23 16:14:48
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