漂うもの
ヒヤシンス


 漂いの中に浮かぶ船はとても空虚だ。
 空虚は僕の心を浸潤する。
 広がり、閉じる。
 この情緒こそ難破船にはふさわしい。

 水面に移る悲しみを鳥たちが啄む。
 僕は自分が何か勘違いをしているかように思い込む。
 予言の糸がピンと張りつめて、
 まるで自分の寿命を計っているようだ。

 空を切る風が僕の頬をも切りつける。
 流れる鮮血を掌いっぱいに受け取って、
 自分の体内に戻すように啜ってみた。

 一つの悲しみを癒すために更なる悲しみを捏造する。
 空虚に見えるそんな行為が新たな癒しとなる。
 今度こそは大空を漂う雲になりたい。


自由詩 漂うもの Copyright ヒヤシンス 2016-11-20 06:08:49
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