パッチワーク
Lucy

 

ビリビリに引き裂いた
力任せに 泣きながら
それでも気が済まなくて
鋏でジョキジョキ切り刻んだ
その切れ端を 徹底的にシャッフルした
元の形などわからないように
二度と思い出さないように

妬みも 憎しみも 哀しみも
握り潰して
踏み躙って
打ち砕いて
粉々にして

罅割れた鏡が
罅割れた貌を映した
向日葵のようだ
枯れたゴッホの向日葵の
花びらみたいに
バラバラと夜の底へ
零れ落ちるのを眺めた

何も惜しくない
何も怖れていない
終わったんだ
散らせて 散り落ちて

跪き
一枚の切れ端
手のひらに乗せた
光りながら後ろへ飛び去って行く街
山間の村を飲んだ湖が写す 分厚い夏空
草だらけのアトリエの庭に
揺れていたガウラ

あなたと眺めた
濁った雲にかかる濃い色の虹
初めてのような強い色だね
もう一生見ることはないのかもしれない
それから雲の切れ間に姿を見せた
大きな満月
六十八年ぶりのタイミングで
地球へ接近したという
まるで祝福してくれるみたいだねと
言いながら 心では
違うことを思っていた
これは予兆
美しすぎて
私たちには似合わな過ぎて

座り込んで
終わった欠片を拾い集めた
一枚一枚並べてみた
細い糸で
繋ぎ合わせた
その糸はすぐに古び
摩り減って
そこから綻びてしまうので
又違う切れ端をあてがって縫い繋ぐ
めちゃくちゃな模様になれ
でたらめな思い出になれ

そんな作業を
もう百年も続けている
もう少し
あと一枚で あなたのための
ベッドカヴァーが出来上がるでしょう



 



自由詩 パッチワーク Copyright Lucy 2016-11-19 14:52:34
notebook Home 戻る