短詩4篇
白島真

「孤島」

樹や動物と共に棲み
助け合うことを知っている
ひとに蹂躙されない
蹂躙しない
等身大の月のひかりにただそよぎ
喜び 哀しみ 反射する
時に痛い波濤をかかえ
消滅を怖れない
その姿をしずかな水面に映している



「破船」

透明な樹があったら
私はちいさな魚となってくぐり抜けたい
泥のついた樹の根のような海
水面には人々のざわめきや
戦火の叫びが炎となってゆらいでいる
私の吐き出すしずかな水泡は
もうそこには届かない

海底ふかく破船に埋もれた詩の宝庫
ひららひらら
振り返らず泳ぐ
あおい魚となって



「白光」

抱えきれないこの空洞の先行きは
銀河を湛えて錆びない意思の塔なのか
あるいは空洞の荒野の後ろには
あかるい羊水の満ち潮が待っているのか



「詩の姿」

胸いっぱいに吸い込んだ哀しみは
けっして吐き出されることはない
あたため うなされ やがて浄化され
片言のうつくしい詩を表出する
ことばが肺胞の奥ふかくにとどまって
哀しみとともに最期の息を吐くとき
それはこの世の雪のように結晶する







自由詩 短詩4篇 Copyright 白島真 2016-11-18 08:40:00縦
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