脱出
ひだかたけし

この夜に目が覚め
この夜底に触れる
私にはもはや
親兄弟家族親族はなく
現世的無縁仏だ
円やかな現世孤児だ

そこでは
 私という存在が剥き出しで
そこでは
 私という存在が真っ裸のすっぽんぽんで

実にスッキリとしたものだ
恐怖と歓喜の段々畑
うねりダイレクトなコンタクト
この夜の底でこの柔らかな底で
私は限りなく境界の縁に触れる
私だけの死の門を垣間見る
門番は豪壮で醜悪な私の分身に過ぎない

夜底はやがて夜明けと共に
紫から橙、黄から壮大な黄金へと
染め上げられていくことだろう

私はその瞬間を捉え
からからからから
廻り昇りゆく
宇宙の風道に乗れるだろうか





自由詩 脱出 Copyright ひだかたけし 2016-11-10 21:45:24縦
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