傘紅葉(かさもみじ)
葉月 祐






厳しい寒さに身を縮めるようにして
霜月 雪の降る街の道路に
ころがっていた 逆さまの傘紅葉


少し前まで
鮮やかに開かれていたその手の平を
突然の寒さに襲われた今は
紅い手の温もりを逃がさないようにして
小さな手の平を 更に縮めている


  あたりを見渡せば
  足元の傘以外には
  目立つ色は無く
  深めに息を吸えば
  鼻の奥がツンとする

  わたしもまた
  凍えた紅葉のように
  手袋も無いこの手を
  寒さに震わせ擦り合わせながら
  一握り分の熱を生もうと試みた


鼻のてっぺんに
刺すような冷たさが走る
一旦いたずらをやめた冬の精が
再び雪を舞い踊らせ始めたのだ


足元の傘紅葉達は
白く積もる結晶の群れを
その身に受けて 更に小さくなり


わたしを包む大きな傘を持つ
温もりを失い始めた右手もまた
あまりの寒さに凍え始めて
彼らのように 縮みたがっている


雪の積もる道路を見つめ
傘越しに冬の訪れを眺めながら
足元にころがる
小さな紅い傘達を踏まないように
冬の精と共に 不規則なステップを踏みながら歩いている



霜月の街に訪れた 早すぎた冬に
道行く人々が持つ傘もまた
早すぎた冬の到来に戸惑いを隠せずに
その身を開きたがらず 震えている


雪に染まっていく
紅く小さな傘の群れは
何も言わずに 真っ白な空を見上げていた











                      2016/11/09/


自由詩 傘紅葉(かさもみじ) Copyright 葉月 祐 2016-11-10 21:20:05
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