晩秋の朝
レタス

コトリ コトリ
秋の時計が針を進めてゆく

外を眺めれば
桜の葉が静かに紅く染まり
欅は黄色く映っている

電流のように走っていた日々は
もう過去の遺物になっていた

いまは
コトリ コトリと
秋の気配に溶け込んで
時計の針のように
静かに生きる

トーストが香ばしく焼き上がり
珈琲が湯気をたて
毎日の朝を迎える

話すことも次第に無くなり
秋のようになってゆく

妻は夏を生き
私は晩秋を生きる

雀が鳴いた

カメラを持ち出し
撮ろうと思っても
その動きに間に合わない

もう そんな歳になったのだ
珈琲とトーストが肩を抱き締め
秋の朝を迎える




自由詩 晩秋の朝 Copyright レタス 2016-11-10 11:17:42
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