遅れてきた奴
佐々宝砂

なに戸惑った顔つきで叫んでるのさ
ワームホールはもう閉じちまったよ
ぷんぷん漂うのはメタンぽいな
どこの惑星から来たのか知らねーけど
諦めて寝てたらどうだ
弥勒が来るころには
またどえらい奔流があんたを飲み込むさ
叫んですむのなら
俺も叫ぼうと思うよ
少なくとも気は済むかもしれねーな
叫んで叫んで叫んで
それで変わるのは自分ぐらいなもんさ
エントロピーはただ上昇する
俺の部屋はただどんどん汚くなる
亜次元のことは知らん
ここは現実だから
ぽい捨てしたものはそのまま
空中に浮遊するよ
消えやしない
ところで
あんたのいた惑星の空は
紫だったかい
青だったかい
俺んとこは赤だったよ
今はきっと黒だろう
混沌の黒
最後に行き着く黒
ああそれでもまだ
あんたは希望を捨てないつもりか?
黒い空に星が消えてゆく
懐かしいね
すこし悲しいね
俺はとても星が好きだったよ


自由詩 遅れてきた奴 Copyright 佐々宝砂 2005-03-03 04:26:22
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