fog
opus

足が痺れて
目がかすむ

鉄パイプで何度も頭を殴る
骨は砕けて
脳が飛び散る
ビチャビチャという音と
泡だつ血
生臭い
吐く息が白い

街灯がチカチカと点滅する
遠くで黒い犬が見てる

カーキのモッズコートが
血でドロドロしている
タバコを吸いたいが
ライターにうまく火がつかない

グチャグチャと音をたてながら
野良犬がそいつを食べる
グチャグチャ
グチャグチャ

空にまん丸の月が昇っている
大きな月
「何だか吸い込まれそうだ」

焼けたトーストの匂い
とろけるバター
忙しない足音に
あたたかい日差し
妻が笑っている
「さよなら。」

目を開いて吐く
吐き切ってもまだ
腹は収縮をやめない

そう思った矢先に
鉄パイプが頭に叩き込まれる
「何だ、そうなのか。」

遠くで黒い犬が見てる


自由詩 fog Copyright opus 2016-11-09 23:35:44
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