蜘蛛
梅宮迷子

床に一ぴき蜘蛛がいる。
あれはこないだ殺した仔だ、
滴るような銀色のナイフで
老婆のようにひらめくちり紙で
その八本の脚は散り散りになり
身に詰まった哀愁
ぞくりとするほどの哀愁は
くしゃくしゃにして
くずかごへ突っ込んだのだ
(勝った!)
しかし、確かに蜘蛛は床にいる
八本の脚をゆうらりと伸ばして
蜘蛛の影が床に落ち、剥がれ、
ひとり歩いてゆく
額にしなだれてかかる髪の穂先や
かるたを捲る頸筋などに
そのつまさきが触り
不浄をかき出すため、つよく引っ掻いて
ふけとあぶらのにおい
生命のにおい


自由詩 蜘蛛 Copyright 梅宮迷子 2016-11-08 18:59:10
notebook Home